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「楓!!」
目に写ったのは力なく床に倒れる姿
痛いとこはない?
どうしたの?
頭は打たなかった?
動く事も言葉を発する事もしない楓に声をかければ少しだけ口許に笑みを浮かべた
「落ちた」
大丈夫だよ。と青白い顔で俺に笑みを見せる
その痛々しい姿に胸が締め付けられ抱き締めたい衝動に駆られ腕を伸ばした瞬間に疑問が頭を過る
俺に楓を抱き締める権利はあるのか?と
また拒絶され苦しませるのか?と
どうしていいか分からなくて伸ばした腕が宙に舞った瞬間に冷たい指先が触れた
力なく俺の指に絡まるその指先に己の情けなさと不甲斐なさで乱暴に拭った筈の涙が馬鹿みたいに溢れだした
「………仁さん?」
不安げに俺の名を呼ぶ楓を抱き締めたいのに
拒否されるのも否定されるのも怖くて動けない
情けなさい
泣き止めと感情にセーブをかけても無理で
繋がれた指先をほどきたくないから涙すら拭えない
「仁さん」
少しだけ困った顔で名前を呼んで力が入らない腕で俺を引き寄せる
きっと凄く苦しいのに
大丈夫と言わんばかりに優しく空いた片手で背中を擦ってくれる
楓の優しさに甘えてすがる事しか出来ない
ごめん
馬鹿みたいに好き
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