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渋谷の地下に建造された巨大研究所施設があった。そこでは、生命の生態や、地球、そのものの研究が日夜されていた。
サンプルとして、様々な種族を人為的に配合しては、結果を残すというの繰り返していた。
「サンプルデータ結果が出ました。」
絵に描いたような、たくましい筋肉を蓄えた中年所員が、書類が入った封筒をデスクに置いた。
室長として、この研究所の最高責任者である女性は、長い髪を横に降りながら書類に目を通した。
「どの結果も真新しさが無いわね。」
二十枚を越すデータ結果を、ものの数秒で見終わると、デスク脇にあるシュレッダーに紙を通した。
「実験とは…常に失敗は付き物です。」
「あら、武藤…けなした覚えは無いのよ?」
武藤と呼ばれた部下の顔を覗き込むようにして見た。
「室長。畏れながら…貴女が、こうだから部下に示しが付かぬのですよ。」
「ふふっ。」と室長が笑うと、腕を組んだ。シュレッダー脇には、ゴミ袋二つ分のチョコレートのゴミが入ってる。
武藤は、視線だけやるとワンテンポ置いてから、室長を見た。
「《あの日》には、時間が無いのでしょう?」
「そうね。早くて一週間…。もしくは…」
ペンを持ち、くるくると回しながら室長が話す言葉が、希望的観測であるか、楽観的観測であるかは、武藤には分からなかった。その先を打ち消すように、《ヴィンヴィンヴィンッ…》と、けたたましい音の警告音が鳴り響いたのだ。
「何事?」
デスク脇に備えられたモニタに、研究所員の顔が映される。武藤も、それが見える位置へと移動した。
『地上の気温が、渋谷のスクランブル交差点の一点を示し上昇してます!』
「ある一点…。まさか?」
『この場所を示す先は…、室長室の頭上軸になります。』
「まさか、バレていたというのか?」
武藤が、焦る顔をするのに対し、室長は淡々と指令を出し続けた。
「研究物の封印。それに、資材を万が一の時に運べるように対処。政府に援助要請。それに《ガーディアンズ》を現場に向かわせて。」
『り、了解しました!!』
通信が終わると、室長はモニターに、その場所を映した。昼時である為に人通り、そして、歯車を回るのを見ていた。
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