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教室に忍び寄る煙は、徐々に視界を遮り始めた。
確かにこのテストをやり遂げなければ、成績は一気に落ちるかもしれない。
ただでさえテスト成績が悪くなる一方なのに、火事に負けてたまるものか!なんて、火事場の馬鹿力が迷子になるなんて。
「ロミオ!解答用紙を持って逃げよっ!」
オレンジをベースに、赤と茶色のチェックが入ったスカート。
サイドポケットからハンカチを手に取って、口や鼻を押さえた。
後席に座っているロミオは、まだシャープペンシルを握って解答用紙に書き込んでいる。
そんな男を見捨てるわけにもいかず窓側へ駆け寄り、窓を開いた。
校庭には、避難していく生徒や先生たちが見えた。
「先生たち最低!なんであたしたちを助けようともしないわけ!?てか、澤口のくそやろうっ!」
愚痴やら文句やらを零し、5階下を見て絶句した。
4階の第2理科室と1階の家庭科室、生物室が燃えている。
つまり、自分たちがいる教室の真下は第2理科室で、黒い煙が立ちのぼってきているわけだ。
家庭科室と生物室は、生徒が出入口としている二つの昇降口付近である。
「ヤバいかも‥」
絶体絶命って、このことを言うのか。
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