No.1-善悪町の善と悪-

4/17
前へ
/29ページ
次へ
教室に忍び寄る煙は、徐々に視界を遮り始めた。 確かにこのテストをやり遂げなければ、成績は一気に落ちるかもしれない。 ただでさえテスト成績が悪くなる一方なのに、火事に負けてたまるものか!なんて、火事場の馬鹿力が迷子になるなんて。 「ロミオ!解答用紙を持って逃げよっ!」 オレンジをベースに、赤と茶色のチェックが入ったスカート。 サイドポケットからハンカチを手に取って、口や鼻を押さえた。 後席に座っているロミオは、まだシャープペンシルを握って解答用紙に書き込んでいる。 そんな男を見捨てるわけにもいかず窓側へ駆け寄り、窓を開いた。 校庭には、避難していく生徒や先生たちが見えた。 「先生たち最低!なんであたしたちを助けようともしないわけ!?てか、澤口のくそやろうっ!」 愚痴やら文句やらを零し、5階下を見て絶句した。 4階の第2理科室と1階の家庭科室、生物室が燃えている。 つまり、自分たちがいる教室の真下は第2理科室で、黒い煙が立ちのぼってきているわけだ。 家庭科室と生物室は、生徒が出入口としている二つの昇降口付近である。 「ヤバいかも‥」 絶体絶命って、このことを言うのか。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加