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1863年 京の町
カンカンと太陽が照る八月。
とてつもない暑さにも関わらず賑わいを見せている京の町を。
腰まである、少し藍色がかった黒髪を頭の高い位置で結っている女顔の美青年と。
鋭い目付きをした、背中辺りまである漆黒の髪を同じように頭の高い位置で結っている美丈夫が歩いていた。
「土方さんッ次はあそこの甘味処ですよ!!!」
女顔の青年──沖田はニコニコと笑みを浮かべながら土方に話しかけた。
土方はそんな彼に呆れ顔。
「まだ食べんのかよ?」
「当たり前です!!
まだまだ回るんですから!!」
輝かんばかりに満面の笑みを浮かべる沖田に、土方の頬は引き吊った。
「だったらお前の金で払えよ」
「嫌ですよ。
今日は土方さんが奢ってくれるって約束ですし」
素知らぬ顔してそう答える沖田の言っていることは事実で。
甘味を奢ると言った土方は深い溜め息を吐き、昨日の自分の浅はかな言動を恨んだ。
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