246人が本棚に入れています
本棚に追加
屍の転がる荒れ地を後にした少女は、とても大きな─東京ドームが数十個入るくらいの─建物の中へと足を踏み入れた。
この建物は"研究所(ホーム)"と呼ばれ、彼女とその仲間が日々の生活をしたり、訓練をする、言わば訓練所付きの家だ。
そしてホームには何千人もの少年少女、青年等の最高でも二十代前半の若者たちが集っている。
少女がホームの扉を開け中に入っていくと、彼女の帰りを察した仲間が"お帰り"と声をかけてくる。
それに"ただいま"と返しながら彼女は奥の部屋へと進んでいった。
一番奥の部屋まで辿り着けば、彼女はノックをし、声をかけた。
「博士、第零番隊隊長希道です」
「あぁ、希道か。 入れ」
中から返答が来ると、彼女──希道は扉を開けた。
部屋の中央には木製の低いテーブルに黒いソファーが二つ。
奥には書類が山のように置かれた木製の机、背もたれの付いた革製の黒い、タイヤ付きの椅子。
その椅子に腰かけている、首にかからないくらいの黒い短髪に藍色の切れ長な瞳、まるで役者みたいに整っている男──博士は、ずっと動かしていたらしい手を止め、視線を希道へと移した。
「で、確か今日は非番だったんじゃないのか?
何で血にまみれてんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!