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暫くのあいだ、希道は拝借している部屋でぼんやりと、しかし視線は何処にも逸らさずに、じぃっと天井の一点を見つめていた。
「…………六五点」
「何が六五点なんですか?」
ポツリと溢した呟きを、いつの間にかやって来た沖田が拾って希道に問いかけた。
希道は視線を沖田さんに向けたが、言葉を返すことはなかった。
いや、彼女が視線を向けているのは彼の背後にいる──
「総司ー、本当にこの子がさっき試合した子?」
童顔で背の小さい、ポニーテールの青年だ。
この青年は沖田と試合をするときに道場で見かけた人であった。
確かそのとき、彼は二人の男と共にいた。
三人を一言で表すならば"大中小"。
その三人でいるときは一番色素が薄い茶髪さんである。
「そうですよ。
平助もちゃんと、その目で見ていたでしょう?」
にこりと笑いながら首をかしげた沖田はそこら辺の女の子より可愛らしい。
沖田の言葉通り、しっかりとこの目で見てはいたが、やはりどうにも信じられなかった。
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