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呆れたようにわざとらしく息を吐いた博士は、ジトッとした目付きで希道を見遣った。
希道はそんな彼に僅かに目線を逸らす。
「暇だからちょっと散歩に出たら敵兵にバッタリと…」
「つくならもっとまともな嘘つきやがれ。
おめぇが外に出てくとこ見た奴から報告受けてんだよ。
"希道総隊長が何かを殺りに行く目付きで出ていきました"ってな」
博士の言葉に希道は"うっ…"と言葉を詰まらせた。
このホームという建物は裏世界の最深部の人間のみが知っている世界最新の設備を持ち、敵に見つかることはないと言われている。
そんなホームの周りを、敵兵がちょろちょろと動き回っていたのだ。
敵兵には気付かれないとわかっていても、拠点の近くをうろちょろされるのは気分が悪い。
それの気配が感じ取れていた彼女としては尚更の話だった。
だから気分を晴らすために殺りに行った、ということである。
それを一通り話した希道は怒られるかと頭を垂れさせ、キュッと目を瞑って身構えた。
それを見た博士は気配無く立ち上がり希道に悟られないように傍に立つと、彼女の頭をわしゃわしゃとした。
これが彼なりの頭の撫で方だ。
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