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それに希道が"わ、…?"と洩らし顔をあげると、博士は眉をハの字にし、困ったような笑みを浮かべていた。
「まぁ、もしもの危険分子はいない方が好都合だからな。
よくやってくれたな」
「っ!! 博士、ありがとう」
博士の言葉に希道はパアァッと明るくさせ、彼にぎゅぅ、と抱き着いた。
博士はそれにフッと笑うと片手で軽く抱き締め返し、ぽんぽん、と頭を優しく叩くように撫でた。
そのまま暫くその体勢でいたが、そんな中、希道はポツリとこぼした。
「……博士、本当に帰らないとダメ…?」
その切なげな声音に博士は胸が締め付けられるような感覚に襲われた。
ホームにいる若者たちは、色々な時代から集められた強者。
何れ元の時代へ戻さなければならない日が来る。
過去や未来、現在など様々な時代の者の集まり故に、争いなどのいざこざが起こらないように彼らの記憶は此処にいる間、一時的に消している。
もちろん、当たり前だが本人から承諾は得て。
だからなにも覚えていない、ホームにいる若者たちは此処を我が家のように思っている。
此処で共に戦う仲間を家族のように、博士のことを本物の親のように慕っている。
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