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「あとは、髪ですね。
結い紐は持ってますか?」
「………一応持ってる」
優はそう返すと何処からともなくゴム紐を取り出し、艶のあるさらさらな黒髪を頭の高い位置で結った。
それを、というよりそのゴム紐を沖田はじっと訝しげな表情で凝視していたが、結い終わると同時ににこりと笑みを浮かべた。
「では、近藤さん達が待ってますから朝餉を食べに行きましょう」
それに返事を返しそうになりながらも、優はコクりと頷いた。
─*─*─*─*─*─*─*─*─
部屋から出ると燦々と降り注ぐ日差しが眩しく、思わず目を細めた。
「(こんなに明るい太陽は本当に久しぶりですね…
これがこの時代にとっての当たり前、ですか…)」
周りを見回せば、草や木が生え、花が咲いている。
遠くを見れば緑の映える山が見える。
この時代の豊かな自然に、目許が緩んだ。
しかし、向こう(未来)のことを思い出すと無意識のうちに眉根が寄せられる。
「(自然や空に関する環境の歴史的知識は必要なかったからわかりませんが…
あのような環境になったのも人の所為なのでしょうね…)」
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