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だから、希道のようになる者も少ないながらも存在した。
でも、結局はみんな元気に旅立っていくのだ。
それを嬉しく、しかし何処か物悲しく感じながら博士はいつも見送っていた。
しかし、と博士は心の中で呟いた。
─まさか希道がその少数の中に入るとは思ってなかったな。
普段、余程親しい者にしかあまり表情を見せない、人にあまり甘えたことのない希道がこんなこと言うなんて、予想してなかった。
彼女のことをよく知っている身としては、多少は泣くだろうなとは思っていたけど。
予想外な彼女の言動に驚きつつも、博士は"あぁ"と返した。
「向こうの時代には、お前の帰りを待っている奴らがいる」
「………うん」
「お前の気持ちもわからなくはないが、そいつらの気持ちも考えてやれ」
「………うん。
もう、我が儘言わない…
でも、たまには戻ってきても良いよね…?」
博士の説得に首を縦に振った希道は、彼に縋るような眼差しを向けながら不安そうに瞳を揺らしていた。
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