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希道はこっそりと壁に愛刀"桜花咲狂斬月(オウカショウキョウザンゲツ)"を立て掛けるとクローゼットから着替えを取り出した。
白いTシャツに袖の無い羽織るだけの薄手の黒い上着、太股の半ば辺りよりも短い丈のジーパン。
それに黒のニーソ、ヒールの低い踝(くるぶし)の隠れるくらいの白い短ブーツを合わせ。
最後に黒のキャスケットを被ると小さな声で呟くように言った。
「我、生まれし時代へと門を開け"時空の扉"」
その言霊に反応するように、何処からともなく木製の大きく、豪華な装飾をされた扉が現れ。
「大丈夫、向こうには先に行った先生もいる。いつか会える。
私は私なりに生きるだけ」
希道はそう自分に言い聞かせるように呟くとドアノブを捻り、扉を開けた。
向こうに見えるのは闇一色。
しきりを越えるまでどんな世界が広がっているかなんてわからない。
希道は不安を抱えながらも元いた時代へと一歩、足を踏み出した。
わざと、愛刀を部屋に置き去りにして。
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