1 顔合わせ

5/18
前へ
/250ページ
次へ
 人がまばらな道を歩き、真新しいレンガ道を行く。そうしてしばらく進むと、他と比べても新しい装いの、濃灰緑(のうはいりょく)色の丸屋根が特徴的な建物の前に来た。  学園の他の施設と違い、そばに他の施設が並んでいたりしない。広々とした庭には大きな池と色とりどりの花が並び、まるでどこかの貴族の別荘のような光景だ。  少年は眉をひそめ、口をヘの字に曲げて呟いた。 「……やっぱ無駄だろ」 「あら、何がかしら?」  ハスキーボイスに振りむけば、数歩後ろに背の高い女性が立っていた。明茶(あけちゃ)色の髪を高く丸めて結っており、うなじに落ちる余り髪が色っぽい。教師が着る共通の紫紺のローブの上からでもむちっとした体の質感が分かる。それでいて太い印象はない。  眼鏡の長方形のフレームを軽く持つ左手に目をやれば、薬指に白金の指輪が見えた。少年はそれに肩を落とし、体ごと女性の方を向く。
/250ページ

最初のコメントを投稿しよう!

515人が本棚に入れています
本棚に追加