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私は、
ごく普通の家庭に生まれた。
なんてことない、
ごくごく普通の女の子。
―………そんな私の弟は、
普通とはちょっと違う。
1歳年下の弟は、障害者である。
障害者と言っても、
動けない、話せない等ではない。
彼は、知的障害を持っている。
年と共に身体だけが成長する。
脳は2歳児に満たない、という障害だ。
一見なんのへんてつもない少年に見える。
しかし彼は、知的障害者として最も悪い傾向を引きずっていく―…
―……
「ア―……」
「ん?どうしたの、昴。」
「…ァーイ―……」
弟は12歳だった。
しかし弟は、
「言葉」を話せずにいる。
脳は2歳児に満たないからだ。
彼に外で一緒に遊ぶ友達はいない。
彼は外に出ると脱走を図るからだ。
言葉を話せない彼が、人とコミュニケーションなど図る事ができる訳がない。
何も、
何もない、彼には。
彼は家で服を着ない。
彼は食事を手で食べる。
彼は家に閉じ込められる。
母親がどれだけ頑張ろうと、
彼はそれを仇で返す。
強い食欲への執念に捕らわれ、彼はまた全裸で家を抜け出す―……
そして近所のコンビニなどで無銭飲食を繰り返し警察を呼ばれる。
コンビニで暴れ、それを私と警官が抑える。
彼は体が大きく、力がとても強かった。
家から脱走する彼を
いつもいつも探す
そんな日々の繰り返しだった。
+.
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