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2017.11.24
高校1年生、冬。
「私、男に生まれたかった。」
「……そうか?」
「男の誉駿には分かんないかな―…。」
「…男って…意外と面倒だぞ?」
「それでもいいの!」
「…心とかそういう面でいったら、女のがぜってぇ強いよ?」
だって私は、
その心さえ強くないから。
強いの吹く肌寒い昇降口。
二人腰掛けた小さなベンチ。
私が久し振りに触れた、
人のぬくもり。
―…「雛は、時々」
「へ?」
「凄い悲しそうな目、する。」
「そんな事、ないよ!」
心を見透かされたと思った
人にそんな事を言われたのは初めてだった
―…誉駿は、自分と同じ柔道部。
女子が3人しかいない為、男女混合の部。
4月に初めて会ってから、
だいぶ仲良くなれた親友。
「…なんか、あるなら…
…言いたくなったら、言えよ。」
その言葉が
胸に刺さるほど嬉しかったんだ
―…
片岡雛、16。
…ちゃんとした友達は柔道部女子2人しかいない。
クラスメイトなんかは、
ただの形式上だ。
挨拶を交わすぐらいで、
休み時間はほとんど1人で過ごしている。
でも、それでいいと思ってる。
苦しくもないし、
気軽だ。
「雛はもっと、
人に頼っていい。」
「…そうかなあ。」
人には頼りたくない。
それは自分のそれまでの経験がそう言っていた。
「ねえ、誉駿。」
「ん?」
+.
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