春の夜に

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顔を隠し、存在を消して生きていた私に彼は声をかけてきた。 「こんにちは」 「…こんにちは」 「初めまして…というべきなのかな」 体格も性格も違うけれど それとなく、彼に雰囲気が似ていた男だった。 「…アナタみたいな有名人が、こんなところに顔も隠さずに居て大丈夫なの?」 「案外…こうゆうところにいると気づかれないものだよ 君こそ、どうしてフードかぶって顔を隠しているの?」 …周りの目線を気にしない人なんだな… カウンターに伏せて呟く 「誰にも、気づかれないように生きるため」 「僕に気づかれたからもう、隠しても無駄だと思うけど?」 「…不思議な人、」 フードを脱いで髪をかき分けると彼は微笑んだ。 ああ、やっぱり似ている。 「君の方が不思議じゃないかな?バーに居るのに飲まないなんて」 「酔っちゃうんです」 「じゃぁ何故こんなところにいるの」 「気分だけでも酔いたいから…」 「ますます、変な子に見えてきた」 そういってくすくす笑う テレビでは見ることのない彼の表情に心臓が脈打つ 人を引き付ける魅力ある方だ 人じゃない私まで引き付けて 彼なら世界征服もできるかもしれない。 なんて考えていると、じっと見つめられる
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