春の夜に

3/3
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「、何…?」 「顔、隠すの勿体ないと思うけど」 「?」 「綺麗な目だ」 ああ、だめだ どうしてこうも似ているのだろう …胸が熱い 「どうしたの…?」 「ごめんなさいやっぱり、私にはアナタは眩しすぎるみたい」 目元を隠して苦笑いを浮かべる 「…惜しいなぁ君ならすぐにこちら側にこれると思うけど」 「お褒めいただき光栄です」 「その気はないの?」 「…考えてもいいですよ?」 こんなんでいいのか芸能界 「じゃあ、待とうかな?」 「…、待ってもこないかもしれませんよ?」 「どうして?」 「私の命が長くないからです」 空気が止まる 彼は困ったようにため息をついた。 ああ、期待させすぎたかな そう思い顔を見るとすごく、悲しそうだった 役者だな なんて考えしかできない私が 少し、胸が痛んだ 「…本当、惜しいね」 「アナタ、本気で私のこと口説いてます?」 「うん、そうだよ?」 「…なら、真剣に長生き考えようかな?」 そういって久しぶりに笑った 驚いている彼を見て ただ、ありがとうといって店を出た。 彼に救われて生きている人間がどのくらいいるのだろう。 「…静ちゃんに似た 不思議な人だったなぁ…」 フードをかぶる本当の意味を隠したまま、私は今日も生で満ち溢れる眩しい街を歩く。 春の夜に 「ぁ、兄さん」 「よう、幽 どうしたんだ? やけに嬉しそうだな?」 「ちょっと、不思議な女の子に会って口説いてた」 「へぇ、幽が…珍しい」 「綺麗な目をしていたよ」 「へぇ…名前は?」 「あ、聞くの忘れた…」 まぁ、また会うだろう なんて確信を抱いていた彼の予感は 数年後、 的中する。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!