いきなりの模擬戦

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 目の前には広大な海。  さっきまで謎の軍事施設の中にいたのだが現在は外。  柏崎さんの後を黙ってついて来たらここに着いたわけだ。  外にいるといっても施設の一角に過ぎないらしく、この広大な海をある程度囲むようにに周りがガラス張りの白い外壁になっている。  ああ、俺達の税金はこう言うところに使われていたのかなんて口が裂けてもいえない。  言ったら言ったで絞首刑にされそうな気がした。 『どうも福山君。第一訓練兵育成官長のノア・ゴンザレスだ、気分はどうだい?』  目の前に髭面のオッサンがデカデカと映し出された。  テレビも無いのにどうやって? 宙に浮いているオッサンの顔は実にシュールだった。俺は笑い堪えるので必死になる。  いったいどんなテクノロジーだよ。  薄透明の画面で、奥の景色が透けて見える。  て言うかさっき聞いたわいアンタの自己紹介。  どんだけ自己紹介好きやねん。反射的に下手な大阪弁がでてしまった。 「ああ、大丈夫です」 『そうか、健闘を祈るぞ』 「あのゴンザレス官長」 「レ、レイでいい!」  なんか頬を赤くして少し照れた様子で言う。  レイって誰やねん。お前ノア・ゴンザレスだろ。 「あぁ、はいレ、レイ官長」  ノア? レイ? どっちが本当の名前だよ。 『なんだね?』  頬を紅潮させたまま親指の爪をかじり、横目でこちらを見てきた。  キモ……。 「もしもウンコしたくなったらどうすればいいですか」 『終わってから出すといいぞ』  プツンと、テレビ画面を消したときみたいに消えるオッサン。  ああ、基本的にこの施設の人は俺のギャグというか下らない質問に対してスルーするスキルを持ち合わせているんだな。
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