嫌よ嫌よも好きのうち

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何を言っている。 獅子之介は困惑した。 今の言葉をどうとらえていいのか、そしてそれにどう返せばいいのか検討がつかなった。 「冗談かい?」 それが数秒間の沈黙の後に獅子之介の口から出てきた言葉。 彼方からの少しぬるめの弱い風が稲穂をざわざわと揺らす。 純子はその長くしなやかな細い髪の毛を片手で抑えながら小さく呟いた。 「さぁ、どっちでしょう。」 遊ばれたのかもしれない。 獅子之介にはそう感じた。 だから、片手に持っている文庫本に目を戻した。 純子は怒っちゃったかなと言いながら口に手を当てクスクスと笑っている。 獅子之介は肩を小さく落として再びため息を吐いた。 .
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