嫌よ嫌よも好きのうち

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少年は制服に付いた埃を手で叩き落とす。 そして、何事もなかったかのようにすくりと立ち上がった。 少年の名は奈良獅子之介(ナラシシノスケ)。 高校生。 背はそれほど高くは無い。 縁なしの眼鏡に細く整った顔立ち。 髪の毛にも染めたような形跡は見られず、好青年のような印象。 どうでもいい。 それが獅子之介の感想だった。 ああいうたちの悪い不良どもに対して抱く怒りも、悲しみも獅子之介にとっては無駄な時間に過ぎなかった。 いや、 そもそもそんなことを悩みと感じるような心の余裕は少したりとも無い。 そういう人生を送っていた。 .
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