嫌よ嫌よも好きのうち

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獅子之介は溜め息を一つ吐き校門を出た。 ここで純子の誘いを断る理由を考えるよりだったら、彼女と共に帰ったほうが手っ取り早いと考えたからだ。 案の定、純子は彼の半歩後ろを着いてくる。 獅子之介は再び息を小さく吐きセカンドバックに入っている文庫本を開いて歩き始めた。 無言。 純子は獅子之介を誘ったのにも関わらず、何かしらの話をきりだそうとはしなかった。 いつものことだ。 獅子之介はこの状況には慣れていた。 そもそも、獅子之介には純子のご機嫌を伺う必要もない。 寧ろ、無言の空間のほうが彼にとっては気が楽だった。 小さな山々に囲まれた一面緑の田んぼ道。 彼らは黙々と歩いていく。 その光景は明らかに不自然のように思えた。 彼女は気まぐれ。 獅子之介はそのことについてはきちんと把握していた。 だから、常に心に準備をしておく必要がある。 突拍子のない質問にうろたえずに答えれるように。 .
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