星墜

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使番が畏(かしこ)まって答える。 「出雲国にては、未だ誰も知らぬ事、と存じます。」 「さようか。その方も他言は無用ぞ。」 「はっ肝に銘じましてございます。」 「遠路遥々苦労であったな。」 元春は、使番にねぎらいの言葉をかけて下がらせた。 それに続いて、次の間に向かって声をかける。 「誰か在る?」 「はっ!御呼びにございますか?」 近侍が顔を覗かせた。 元春の目が、いつの間にか殺気をはらんでいたようだ。 「いっ如何がなされましたか?」 近侍の顔が怯えてしまう。 心は早や戦場にあったか… 元春は苦笑いを浮かべた。 「いや、何でもない。」 「はぁ…」 「それより、諸将を呼び出してくれ。」 元春は、評定を開こうとしていたのだ。 目下、配下の諸将は、各戦線に散って戦の指揮を執っていたのである。 召集を受けた諸将は、梅雨の長雨を突いて応召した。
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