変わったのは僕らの関係だけ

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友達だった。 四年前までは。 三年前からは別の感情が俺の頭の中を渦巻いている。 なのに君は気付かないままで。 「裕翔くん一緒に帰ろ」 「うん」 君は何食わぬ顔をして俺を見る。 なんて綺麗な笑顔なんだ。 このままずっと見ていたい。 「…裕翔くん? 顔、怖いよ?」 「ああ、ごめん。 何でもないよ」 「ふうん…」 不思議そうに見つめながらも、すぐにいつもの顔になり前を向く。 人に気付かれないように裏通りを歩く。 俺と山ちゃんだけ、二人の世界。 気付いたら空も暗くなっていて周りがよく見えない。 ふと俺は立ち止まる。 「山ちゃん、やっぱ今日寄り道していこう」 「いいけど…どこに?」 「ここ」 言った瞬間俺は山ちゃんを路地裏に引っ張っていく。 「ちょ、裕翔くん!?」 「ねぇ山ちゃん。 俺のこと好き?」 「え…好きだよ?」 「じゃあこういうこと出来る?」 「ん…!?」 山ちゃんの唇に無理矢理俺の唇をくっつける。 山ちゃんはびっくりしてしばらく固まっていたけど、やがて俺を突き飛ばした。 「なっ、なに!?」 山ちゃんの顔が変わった。 「俺、山ちゃんのこと好き」 「裕翔...くん…?」 「ずっとずっと好きだった」 …けど。 「山ちゃんの好きは俺の好きとは違う」 わかっている。 わかっていた。 とっくの昔から知っていた。 「裕翔くん、俺… 裕翔のこと尊敬してる。 かっこいいし、優しいし、頼りになるし、けど...」 山ちゃんの顔が声と共に下がっていく。 「…なんで山ちゃんが泣きそうになってんの」 「だって俺…全然裕翔くんの気持ちに気付いてなくて…」 そんなことを言う山ちゃんを今すぐ抱きしめたくなったけど、でも、そんなこと出来ないから。 俺達は立ち尽くしたままで。 「山ちゃんいいよ。 無理しないで」 俺が言うと、山ちゃんは顔を上げ俺の目をしっかり見つめて言った。 「ごめんなさい」      
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