愛しい人

2/3
前へ
/154ページ
次へ
「今年も、降んないね」 「え?」 しばらくぼーっとしていた山ちゃんがふと呟いた。 「雪だよ雪」 「ああーまあ東京だしね」 「だよなあ…」 そうやって山ちゃんは窓の外を見ながらまたぼーっとしはじめた。 今日はイヴだってのに俺達は仕事が入っていて、メンバーといれるのは嬉しいけど… 「今日デートしたかったね」 「…ばか。 そういうこと言うな」 山ちゃんは言ってから少し悲しそうな顔をした。 本当に素直じゃないんだから。 「撮影終わったらさ、二人でクリパしよ?」 「は? 仕事終わんの何時だと思ってんだよ」 「いいじゃん別にー」 「まったくこれだから裕翔くんは…」 そういう山ちゃんは少しにやけていて、かわいいなって思った。 「さぶーいっ!」 外に出ると予想異常に寒くて山ちゃんはわざとらしくぶるぶると震えた。 「山ちゃん、手貸して」 「えっ?」 俺は山ちゃんの手を自分のポッケに入れた。 「片方は俺の手袋貸したげる! 少しは寒くないでしょ?」 「ばかっ 誰かに見られたら裕翔くんのせいだからな」 「はいはい」 俺達はいつも行く公園に行った。 ここは人が来ないからお気に入りの場所だ。 「とりゃ!」 「うっひゃ!?」 買ってきた温かいココアを山ちゃんのほっぺにくっつけると、面白い反応が返ってきた。 「山ちゃんかわいーっ」 「うっせ//」 そうやって悪態ついてそっぽ向く山ちゃんが余計にかわいくて、思わずキスしたくなった。 「山ちゃ、」 「あ!」 山ちゃんの声に驚いてふと周りを見ると、なにかが落ちてきてるのが分かった。 「これ…もしかして…っ」 「雪っ!!裕翔くん!! 雪だよ、雪!!」 「ふ、降った…!」 山ちゃんは目を輝かせて立ち、公園を走り回った。 「やべえ、やべえよ! まじテンション上がる!! 裕翔くん早くこっち来て!!」 山ちゃんに言われて立つものの、ここにいたい気持ちでいっぱいだった。 笑顔で子供のようにはしゃぎまわる山ちゃんは可愛くて、でもどこか美しくて、綺麗で… しんしんと降る雪を、空を見上げて見る山ちゃんが愛しくてしょうがなかった。 俺は山ちゃんの元へ走っていき、おもいっきり抱き締めた。  
/154ページ

最初のコメントを投稿しよう!

261人が本棚に入れています
本棚に追加