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「どうしたものか」
淹れたてのコーヒーを一口のみ爺から帰り際に渡された書類をめくる。
小さな文字でビッシリ書かれている書類はやはり読む気が失せルナに渡す。
ルナはペラペラと捲りテーブルの上に置いた。
「ルナ、お前の意見は?」
「特にありません」
今私達は街の一角にある喫茶店にいる。
爺の部屋を後にした私達は次の任務の事について話し合っている。
休戦協定が守られている間、私達の任務はゼロに近い。
やる事がないのなら私は休暇をもらいたいのだが……
どうも今の状況がおかしく考えがまとまらない。
「純、ひとつ教えて下さい」
ルナが私に質問など珍しい。
「晶とは誰ですか?」
…その事か。
ルナは頭がいい。
いや、そんな一言で済まされるレベルじゃない。
彼女は軍関係者、政治家、主にこの国を動かしえる人物の名前から家族、交友関係を全て把握している。
彼女は自分の情報収集能力に誇りを持っている。
そんな彼女が爺との会話の中で出てきた知らない人物に不快感を持ったのだろう。
晶の説明は難しい……
私はルナ程頭が良くない…いや頭が悪い部類に入る私には晶の説明は出来ない。
「ああ…。気にするな」
答えるとルナから凄まじい程の怒気がヒシヒシと伝わってきた。
「私が知る必要ない人ですか。なら何故あの場で名前が出て来たのでしょうか?」
そこまで言うと席を立ち店を出て行った。
……面倒な事になった。
彼女は知らない事は 徹底的に調べあげるタイプだ。
納得するまで帰って来ないだろう。
以前、彼女に冗談で伝説の防具[死出の羽衣]の在処を知らないかと尋ねた。
無論知るわけもなく、私はからかうつもりで彼女に言った。
「やはり、知らないか……ルナでも知らない事なんて山ほどあるよな」
その言葉にプライドを傷つけられたのか。
……次の日、彼女は姿を消した。
3ヶ月後、私が自宅でくつろいでると彼女が訪ねて来た。
彼女は一枚の紙を私に渡した。
そこには羽衣の在処がいくつか書かれていた。
「信憑性の高い場所は3カ所です」
まさか…。数百年、表舞台から姿を消した代物を三カ月で調べたのか?
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