破棄

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「才蔵さん。ガロアルジア軍が此方に向かって進軍しています。」 ルナと呼ばれていた少女は軍議室に待機する才蔵さんにそう言った。 何故わかるんだ?彼女も私達と軍議室に待機している。 外の情報などわからないはず。 「後どれくらいで着きそうだ?」 「一時間かからないでしょう。」 そうかと頷くと兵士達に指示を出すと軍議室を出て行った。 部屋には彼女と俺だけになった。 …居ずらい。 別に才蔵さんと彼女が今まで話しをしてた訳じゃないが2人だけになると何とも耐え難い空気が流れる。 「俺も準備をして来ます。」 自分よりも年下であろう彼女に何故か敬語を使ってしまった。 返事はない。彼女は微動だにしない。 俺は部屋を出て才蔵さんを探す。 才蔵さんは広場で兵士達に指示を出していた。 「才蔵さん!前線に向かいます!」 才蔵さんは俺の肩をぐっと握りしめて話す。 「吉影。十傑がいないとは限らん。気をつけろよ。」 体が震える。 武者震いならかっこいいんだが俺は恐怖で震えている。 北斗さんは十傑のガルクに殺された。 …強かった。 北斗さんは強かった。ガルクを圧倒し、後少しの所まで追い詰めた。 ガルクは北斗さんには適わないと判断し1人だけでも倒そうと俺に向かって来た。 俺だって三銃士の1人! 燈国の英雄と云われる北斗さん程ではないが手負いのガルクなら俺でも! 向かってくるガルクは何故か不気味に笑っていた。 「逃げろおお!!」 北斗さんの叫びと同時にガルクは右腕に持つ剣の切っ先を進行方向と真逆に向け大量の魔力を放出した。 放出した魔力の勢いに乗り俺との距離を一気に縮めた。 「ヒャハハハ!道連れだああ!!」 左手の長剣は俺の胸を真っ直ぐ狙っている。 避けれない! …死を覚悟し目を閉じた。 数秒経っても胸に痛みはない。 即死だったのか… ゆっくり目を開けると 「…北斗…さん?」 目を開けた俺の前に北斗さんの背中が見えた。 いつも追いかけていた背中にはガルクの長剣が刺さっていた。 「ヒャハ…ヒャハハハ!コイツはラッキーだぜ!まさか北斗。お前を殺せるとは思えなかったぜ!」 「北斗おおお!!」 才蔵さんがガルクに斬りかかる。 ガルクは北斗さんに突き刺した長剣を抜き取り距離を取った。
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