破棄

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兵士達の槍は俺の体を貫いた。 …いや、痛みはない。 俺を刺した兵士達はゆっくりと凍っていくと崩れ落ちた。 一体… 「何をしたんだい?!」 体はまだ動かないが明らかに動揺する暢紀の声が聞こえる。 「震繰の羽衣ですか。音波を発生させて他者を操る最高ランクの防具。純が喜びそうです。」 この声は… 姿が見えないがあの少女だろう。 宗谷の部下がコレをやったのか? 「吉影!」 才蔵さんの声が聞こえる。すぐ後ろにいるんだろうが俺の体は動かない。 「…すいません、才蔵さん。暢紀にやられて体が…」 動いた。 暢紀が能力を解除したのか? 振り返ると才蔵さんとやはりルナと呼ばれていた少女だった。 「才蔵さん。兵士達を城塞まで退かせて下さい。」 馬鹿な!! そう言おうとした俺を才蔵さんが止めた。 才蔵さんは彼女の指示に従い兵士達を撤退させた。 「退くぞ、吉影。頼むぞ月島。」 才蔵さんの言葉に返事もせずに彼女は前を見つめる。 「才蔵さん!彼女を一人残して撤退なんて!!何を考えているんですか!?」 「邪魔になる。」 ぼそりと呟き才蔵さんは城塞へ走り出した。 …だが。「納得いかない!一人で立ち向かうなんて自殺行為だ!」 兵士達を凍らせたのは彼女の仕業だろう。 だが5万の軍勢を一人でやる事など宗谷と同等の実力がないと不可能だ。 それに加えて十傑の一人がいる。 「才蔵さんの言われた通り邪魔です。退いて下さい。」 「断る!!」 彼女がどんな能力を持ってるか知らないが暢紀が俺にかけた技を使われたら手も足もでずに兵士達に殺されてしまう。 「警告はしましたよ。」 彼女はゆっくりと宙に浮き暢紀と同じ高さで止まった。 飛翔能力! 一介の兵士が何故そんな物を持っている?! 「震繰の羽衣、頂きます。」 暢紀は驚く訳でもなく彼女に向かって笑う。 「あははは!面白いお嬢ちゃんね!!逆に私がお嬢ちゃんの持ってる物貰ってあげるわ!」
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