破棄

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「ご安心を。ここにはあなたと僕しかいませんから。」 どういう事だ? 確かに人は見当たらないし街中で戦ってるというのに悲鳴も聴こえない。 「あなたが来ると聞きましてね。昨日のうちにこの街の人間は消させて頂きました。勿論、国王もね。」 淡々と話す翡翠の周りに濃い闇が纏わりつく。 「呑まれたのか。」 全属性の中で最強の攻撃力を誇る闇の特化型は扱いが難しい。 特化型の戦闘力はイメージによって決まる。 それ故私は死出の羽衣やクレイモアのような普通の人間では触れる事さえ出来ない武具を身に付けている。 翡翠も似たような物を身に付けているはず。 狂気を帯びる装備を身に付ける事。 それが闇の特化型の基本であり奥義となる。 翡翠は狂気に負けて闇に呑まれたのだ。 「失礼ですね。呑まれたのでは有りません。闇と一つになったのです!」 刃を放つ翡翠に私も刃を放ち相殺する。 さて、どうやって倒すか…。 晶が言ってた通りなら… 翡翠との間合いを詰めて剣を振り下ろす。 翡翠は剣を受け止めようとするが私は剣を引き進行方向を変えて胴を斬る。 翡翠は胴を斬られて崩れ落ちる。 …やはり。晶の予想通りか。 翡翠は何事もなかったように立ち上がった。 「効きませんね。あなたに私は倒せませんよ?」 にやりと笑う翡翠には斬られた後すらない。 (闇に呑まれた特化型は純では倒せない。Bダッシュで逃げる事を薦める。) 晶…Bダッシュてなんだ? 逃げる選択肢はない。 アンジェラと燐が此方に向かって来ている。 アンジェラと燐では翡翠には勝てない。 …試してみるか。 クレイモアに込められた魔力を解放する。 解放した魔力は空気中に霧散し消えた。 「おや?もう諦めてしまいましたか?」 翡翠は本当につまらなそうにそう言った。 無論諦めた訳ではない。 クレイモアから魔力を抜きたかっただけだ。 クレイモアの切っ先を翡翠に向けて一気に詰め寄る。 翡翠は構えようとはしない。
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