破棄

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「がぁ!!」 振り下ろされた腕が消えた。 翡翠が腕を押さえ苦しむ。 「やぁ、隊長。」 …何故ここにいる? 姿は見えないが陽気な音楽がそこに誰がいるのかわかる。 「都市は殲滅したのか?雅樹。」 高々と笑い雅樹は言った。 「まさか。隊長、僕はスーパーマンではないんですよ?途中で進路を変えてここへ来たんですよ。」 雅樹は私を起き上がらせ壁際に運んだ。 相変わらずの命令無視か…。 声に出して笑った。 「アンジェラと燐は隊長の命令通り殲滅したでしょう。全ての都市を潰す必要はありませんよ。」 雅樹は大きな任務の時は必ず現れる。 そして必ず命令を無視した行動をとる。 …元々、私の部下でいる事がおかしい男だ。 とやかく言うつもりもない。 「後は僕がやりますよ、隊長。」 翡翠は弱っている。 アンジェラと燐2人がかりなら勝てるだろう。 だが雅樹は… 「雅樹、本気でやるのか?」 雅樹はニヤリと笑い翡翠へゆっくりと歩いていく。 「…では、頼みます。…師匠。」 振り返りはしない。 ただ、雅樹はいつもと違う優しい声で話す。 「君にそう呼ばれるのは何年ぶりかな?純。」 翡翠はなくなった腕を復元してクレイモアを拾う。 その表情は雅樹を警戒してはいるが余裕がみえる。 「なるほど。あなたは宗谷隊長のお師匠様でしたか…可愛い弟子を目の前で殺されるのはさぞお辛いでしょうね。」 翡翠が不気味に笑うなか雅樹は首を横に振った。 「純は死なないよ。僕がここにいるからね。」 翡翠は気分を悪くする訳でもなく大声で笑い一気に雅樹に詰め寄る。 雅樹は動かない。 いや、動く必要がない。もう、勝負は決まったのだから。 突如現れた十字架に体を貫かれた翡翠は身動きが取れずにいた。 「なんだコレ!なんだよコレ!!」 翡翠の問いに答える者はいない。 いや、私もわからないのだ。雅樹が何をしたのか…。 雅樹は振り返り私を見ると諭すように話した。
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