休戦

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夕食を済ました私はルナと別れ街の隅にある小さな教会にいる。 私に神に祈りを捧げる習慣はない。 人と会う為にここへ来た。 教会の地下一階に行くとそこは規則的に棺桶が並べられている。 ゴト…。 棺桶のひとつを足で押すとその下に階段がみえる。 螺旋状の階段を下りて行くと木製のボロボロな扉。 扉を開け部屋に入るとピンク色の棺桶がひとつだけある。 私は棺桶の上に座る。 「起きてるんだろ?」 「……女の子の部屋に勝手に入っちゃダメってお母さんから習わなかったの?」 棺桶の中から体を透き通る様な女の声が聞こえる。 「記憶にないな」 「用は何?」 「何を考えている?」 「悪だくみ」 「そうか」 晶から何も聞き出せない事はわかっている。 「あの程度の子があなたの右腕?」 「ルナはよくやってるよ」 「あの子は私に気づく事も出来なかったよ?」 「お前を見つける事が出来る奴なんているのか?」 「いないと思う」 「晶……ルナで遊ぶのはやめろ」 「うん。もうしない。安心して」 これだけ聞ければいい。私の用は終わった。 「純。学校の先生は楽しいよ」 「受けるつもりだ」 「そう。よかった」 「もし、私が受けないといったらどうしてた?」 「聞きたい?」 「……いや、いい」 私は立ち上がり部屋を出る。 「純」 晶の一言に扉の前で足を止める 「私は影の支配者じゃないよ」 扉を閉めて部屋を後にした。
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