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「三番隊か……俺辞めたくなってきた」
一人の生徒が教室へ向かうなかボソリと呟いた。
「……俺、今日帰ったら母さんに手紙書くよ……」
もう、殉職準備?早いわね。
「うっ…うう~…ぐすっ」
泣き出す生徒まで出てきた…。
彼らは自分が三番隊に配属されるなんて夢にも思わなかったのか。
確かに三番隊…いや、宗谷 純という人物は色々と黒い噂が絶えない。
総大将の地位を狙って殺そうとしたとか。
部下を3ヶ月間不眠不休で働かせたりとか。
気に食わない兵士達を敵の罠に見せかけて全滅させたとか。
数えきれない噂が飛び交う。
勿論、私は信じてない。
私の住んでた町は首都から離れた国境付近の場所にある。
そんな場所だから噂が来る頃には二転三転していてもおかしくない。
「……ここだ」
先頭を歩く生徒が足を止めた。
「お前入れよ」
先頭の生徒を突っつく生徒。
「お前が行けよ」
先頭の生徒は本当に嫌がり突っつく生徒を自分の前に行かせる。
「誰でもいいから入れよ」
先頭を歩く生徒達が揉めはじめた。
…情けない。教室に入るだけで何をしているの…!
中々入らない生徒に業を煮やした私はドアを開けようと先頭の生徒を押し退けた。
「ようこそ。三番隊へー」
ドアが開き可愛らしい女性が元気よく顔を出した。
「入って入ってー」
彼女はニコニコと手招きする。
こ、この人が宗谷隊長?何かイメージと違うわね。
先頭の生徒を押し退け前にいた私が一番に入る事になった。
教卓の前にいる人物と目が合った。
漆黒のコートを羽織りこちらを見る少年は明らかに異質なオーラを纏っていた。
その瞳を見た私は震えていた。
吸い込まれる様な闇色の瞳。
彼女じゃない……この人が宗谷隊長だ。
……噂は本当かもしれない……
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