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「失礼します!」
「わっ」
恐怖を振り払う為、声を上げ一礼する私に驚く彼女。
「好きな場所へ座れ」
感情の込められていない言葉を受け、私は一番前の奥の席に座る。
「し、失礼します!」
「しす礼いします!」
「失れ…」
「やかましい」
私に続き一礼をして入って来る生徒に彼は一言そういった。
「純、そんなに怒らない怒らないー。皆怖がってるよー?」
言葉を遮られた生徒は今にも泣き出しそうだ。
後から入る生徒は黙って席に座る。
全員入った所で彼は話す。
「まず、はじめに……」
彼の次の言葉に皆が緊張する。
「……狭くないのか?」
……狭いです。
教室には長椅子と机が12席ある。
それを20人の生徒が一番前の3席に座っている。
「えーと。ひとつの席に3人ずつ座ろうかー?」
ドアを開けてくれた彼女の指示に従い生徒達は速やかに移動する。
「そう緊張するな」
……無理な話しです。
あなたに見られている私達は蛇に睨まれた蛙。
機嫌を損なえば命がないと本能が知らせている。
「い、いや~。ぶっちゃけもう怖くて」
『!!!!』
生徒達の視線が一斉に声の主に向く。
そこには紫の髪をポリポリ掻きながら馬鹿ズラでヘラヘラ笑う女。
生徒達の視線を尻目に話しを続ける。
「入るなり怖い顔で睨まれたら。黙っちゃいますよ」
(やめろー!!!!)
生徒達は心の中で叫んでいるのがわかる。
…誰かあの馬鹿を止めて頂戴。
ドアを開けてくれた女性は声を殺して笑ってる。
「顔は生まれつきでな。どうにもならん」
「アハハハ!!」
ドアを叩きとうとう声に出して笑いはじめた。
彼は彼女を睨むが気にせず彼女は笑い続ける。
「お前、名前は?」
「むっ。人に名前を尋ねるならまず自分から名乗って下さい。」
終わった…。
生徒達は目の前の彼が誰かわかっている。
あの女は生きて帰れないだろう。
彼女の隣に座る生徒は顔を隠して無関係ですとアピールする。
「私の名前は宗谷 純。お前達の上司……教官になるのかな」
わかっていますよ。
一人を除いて……
「えええええ!!」
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