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手招き法師
それは実際にいた法師と惨劇の話し。彼は私と同じく死出の羽衣を手に入れた。
しかし彼の精神は羽衣の【声】に耐えきれず精神が壊れた。
主の意志がなくなった羽衣は生者の精神を食い荒らし生きる屍にしていった。
国は次々に滅びていったが時の英雄、ネオが微天使の羽衣を纏い死出の羽衣を封印した。
と云う話しだ。
この話しは数々の古文書に記されて今も伝えられている。
子供が悪い事をしたら「手招き法師が来るよ」と言って親がよく使う手段にされたりしているらしい。
「はあ。隊長凄い物持ってますね」
やはりよくわかってないエミル。
「宗谷隊長、それは安全なんですか?」
涼子が恐る恐る聞いてくる。
いつの間にか教室のドアの前に移動している。
「私が持ってる限り安全だ」
死出の羽衣は私の能力を飛躍的に上げてくれる。
制御出来ないのなら、こんな代物を探したりしない。
「うーん。でもなんともないですよ?別に声なんて聞こえませんし」
当然だ。外に漏れない様に抑えているからな。
この【声】が周りに聞こえたりしたらルナ以外は皆、私に近づけない。
「隊長、着てみていいですか?」
「死ぬぞ?」
私は間髪いれずに答えたがエミルは納得しない。
「もしかしたら私にも使えるかもしれないじゃないですか~」
無理だ。この魔具を使えるのは闇の能力を持つ者だけ……
私がルナの着ている魔具を使った時は頭が割れる程の激痛に襲われた。
……説明してもわかる様な奴ではないか。
「なら、声を聞いてみるか?」
「え?」
エミルをコートの内側に引き込んだ。
「!!!」
慌てて離れ尻餅をつく。
「なななな、なんですかそれ!?」
肩を激しく動かし瞳には涙が溜まっている。
「お、おい。大丈夫か?」
生徒が心配して声をかける。
生徒達は教室の外に移動していた。
「う、うん。大丈夫」
まだ、少し息が荒いがだいぶ落ち着いた様だ。
「ど、どうだった?」
生徒の質問にエミルが答えた。
「……なんか。色々な気持ちが頭に入って来た」
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