首席とおちこぼれと天才と

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「……それは、与えられた訓練で強くなれないと思ったからです」 宗谷隊長もやらないなら別にいいと言っていたし。 「んー、純の訓練は受けないのに任務はやりたいとー?」 「宗谷隊長に訓練は受けなくてもいいと言われました」 アンジェルさんは立ち上がり窓を開けるとタバコを取り出し火をつけた。 この人の姿からはあまりにも似合わない 。 「純は最初ね、涼子ちゃんを連れて行く気だったわよー」 じゃあ、なんで!? 「なんで、連れて行ってくれなかったんですか!?」 アンジェルさんはニコニコと笑って信じられない言葉を言った。 「私があなたにムカついたから、純に連れてくなって言ったのー」 ……この人からそんな言葉を聞くとは思わなかった。 「訓練は受けない、けど任務は受けますってわがままだよねー?」 確かにそうだけど…… 「私だって、普通の訓練なら受けますよ!けど宗谷隊長の訓練は……」 アンジェルさんが私の目の前にいる。今まで窓際でタバコを吸っていたのに。 アンジェルさんは私にだけ聞こえる様に耳元で話した。 「ココは学問を学ぶ場所じゃないのよ?あなたは見習い兵士……純(上官)の命令を無視するあなたを処分する事だって出来るのよ?」 いつもの明るい声のアンジェルさんではない。 その声は暗く冷たい。 「アンジェル。涼子が怯えてます」 ルナさんの言う通り、私は震えていた。 肩を抑えつけ、必死に止めようとしても止められない。 「いやー、メンゴ、メンゴー」 背を向けルナさんに謝るアンジェルさんはいつもの間延びした声に戻っていた。 「涼子、自分の我を通すなら、それだけのリスクがある事を理解して下さい」 話しは以上です。とルナさんが言うとアンジェルさんも席に座り雑談し始めた。 私は少しの間、震えが止まらずその場で膝をついていた。
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