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……冷たい。
体がひんやりとする。
「起きたか。レイミ=クリスマス」
その声の主は少し離れた場所からこちらを見ていた。
「……隊長、あの……」
「大した威力だな」
隊長の一言に固まってしまった。
やっぱり、見られちゃったか……。
「何故、力を隠していた?」
隊長相手に惚けるのは無理だよね……
「怖いからです」
正直に答える事にした。
「私は子供の頃、住んでた場所で天才って言われてました。大人にも負けた事はありません……戦う相手がいないから森や洞窟なんかを探検して襲ってくるモンスターを相手に鍛錬してました」
上半身だけ起こし体を見る。
出血は止まっているみたいだけど、痛みは消えてない。
近くに空になった瓶が転がっている。
市販されている薬の中では一番高い傷薬だ。
辺りを見渡すと狗猿と戦った場所じゃない事がわかる。
隊長が運んだのだろう。
周りには木も草も生えてない。
大きな石の上にいるのか、お尻が少し冷たい。
「……ある日、私が住んでた場所はモンスターの群に襲われました。私は前々から試したい技をモンスターの群に向けて使いました……」
「それがあれか」
かなり高い場所にいる様で私が狗猿と戦った場所が見える。
「仕組みはわからないが凄い技だ」
私が撃ち出した魔法は扇状に前方百メートルを消滅させていた。
「あれでも加減したんです……。けど、あの時の私は全力で撃ちました。その方が皆に褒められると思っていたんです。けど……」
昔を思い出し目頭が熱くなる。
「化け物とでも呼ばれたか?」
隊長は私の手を取り立たせた。
「レイミ=クリスマス、お前は化け物だと言われた事に傷ついて力を隠したのか?それとも、周りの人間が離れて行ったのに傷ついて力を隠したのか?」
……決まっている。
「両方です」
「そうか」
隊長は答えると腰に差した剣を握る。
鞘から現れたのは漆黒の刀身。
隊長は剣を抜き終わると私に言った。
「お前は天才かもしれないが化け物ではない」
……そんな言葉が欲しい訳じゃないんですよ隊長。
私は……私以上の……
「自分以上の化け物が欲しいんだろ?」
隊長は見下ろす大地に剣を振った。
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