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ルナは山田に敵意の目を向ける。
……ミルクの事になると感情的になるな。
「なんじゃと!?」
山田が続けて何かを言おうとしたがルナはミルクを連れて部屋を出て行った。
「ちくしょう!」
山田はジョッキに半分以上入ってた酒を一気に飲み干した。
「山田隊長ー、どうしてルナが怒ってるかわかってるー?」
アンジェラがタバコに火を付け山田に聞いた。
「それは俺が花子の服を……」
「違う違うー。ミルクの事あまりに知らないからだよー」
ミルクを知らない?。
「山田隊長とミルクは今まで離れて暮らしてたのー」
アンジェラが私の心内を読んでか説明してくれた。
「ああ、そうじゃ……両親を幼い時に亡くしての。俺は中央の軍隊学校に入り、花子は親戚の家に置いてもらってたんじゃ」
なるほど。離れて暮らしたのなら会いにも行けず、ミルクが一着しか持ってなくても気づかないだろう。
山田は隊長になって日が浅い。
隊長となれば休みもある程度融通が利くが一兵卒は中々休みなど貰えないらしい。
アンジェラが前いた隊は一年に三日あればよかったと言っていた。
「そう会いには行けんかったが毎月必ず少しではあるが金を親戚に渡してたんじゃ。花子が暮らしていけるくらいの分はな」
前五番隊長はプライドの高い貴族だったからな。
実力があった山田も平民出と言う理由だけで不相応な待遇を受けていたな。
「そのお金は全部親戚が自分の子供の為に使ってたみたいよー」
「なに!?」
「ミルクは学校にも行かせてもらえず朝から晩まで家の手伝いをさせられてかなり酷い仕打ちを受けてたみたいねー」
山田の顔がみるみる鬼の形相になる。
今にも親戚の家に押し掛けそうな勢いだ。
「花子は俺に一言も……」
「言えないよねー。時々しか会えないお兄ちゃんに私は辛い日々を送ってますなんてー」
山田は鬼の顔から今度は泣きそうな顔に変わった。
「山田、とりあえずここを出よう」
私は山田を連れて部屋を出ると先程の店員がいた。
「すまないがどこか空いてる部屋を貸してくれないか?」
店員は山田の姿を見て何も言わず離れの部屋へ案内してくれた。
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