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帰り道、晴れの日は通らない道筋をたどりながら、僕は歩いていた。傘をさしている。アスファルトに音が響いている。続いてくれた雨のループ。昨日と同じく、僕は彼女へと歩を刻んでいた。会いに行って、別れて、また会いに行く。これもまた、雨の日のループか。
──こんにちは。
間もなくして、そこに到着した。
「え……? はい。こんにちは。」
やはりいた彼女。昨日とは違う服だ。ちゃんと着替えているんだと思うと、少しだけ安心した。でも、ずぶ濡れなのと、振り向きすらしないのは、昨日と同じだった。
──今日もいい天気ですね。
「ふふ、なかなか皮肉なご挨拶ですね。今日も何か御用ですか?」
──どうして雨の日はこの場所に来るんですか?
「うーん……、それはちょっと違います。雨の日に私がここに来るんじゃなくて、私がここに来ると雨が降るんです。……だから、雨の日を選ぶんです。」
ふと、真剣そうに雨雲を睨む。
「私、雨女ですから。」
彼女はその目で何を見ているのだろうか。雨雲ではない、雨粒でもない、もっと別で、もっと重要なものを見つめている気がする。
──じゃあどうして、この場所に来るんですか?
「それは……、内緒です」
──そうですか。
「はい。」
と、会話が一区切り。そう感じた矢先に。
「あなたは……」
と、彼女から予期せぬ二の句が零れた。
「あなたはどうして、私に構うんですか?」
不機嫌の表象ではなく、純粋で素朴な疑問のようだった。横顔が少しだけ思考の色を映し出している。
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