13人が本棚に入れています
本棚に追加
「嬉しい」
彼女がまた笑う。いつもの幼さが漂う笑みとは違う、大人っぽい笑顔。
僕はそれを見ながら、遠い未来にいる僕はこの笑顔をいつも見ているのだろうかと考える。彼女は隠しているつもりなのかもしれないが、入院してからずっと彼女は顔色が悪い。未来では、顔色の良い彼女の笑顔が見たいな。
「ねえ」
「うん?」
「私が脚を切っちゃっても、あなたは好きでいてくれる?」
「うん。ずっと好きでいられるかは分からないけど、脚が無いからって嫌いにはならないよ」
「あなたらしいね。『一生愛してる』くらい言ってくれないの?」
「一生だなんて重い言葉を軽く使うのは嫌なんだ。『今日も愛してる』なら言うよ」
「なーんか格好悪いけど、まあ、それを毎日言ってもらえば問題ない、のかな?」
「多分ね」
それから二人であれこれと言い合っては笑い、彼女が入院して以来閉じ込めておいた本音を存分に出し切った。
楽しいと時間の進みが早く感じると言うが、それを実際に体験したのも久しぶりなように思う。
だから、
「わわっ、もう行かないと講義に間に合わないんじゃない?」
と彼女に言われるまで、時間という概念が自分の中から取り除かれていたような感覚だった。
僕はサボろうかとも考えたけど、彼女が無言で放つ『サボり駄目、絶対』というオーラに背を押され仕方なく行くことにする。
最初のコメントを投稿しよう!