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後になって思い返してみれば、一年という月日が流れるのは本当に早い。
これはその一年間に楽しい思い出が多かったのか、それとも流れた時間が長すぎて脳が勘違いを起こしているのか。別にどちらでもいいけど、とにかくこの一年は早かった。
町はクリスマス一色に染まり、大きなクリスマスツリーの前に立つ僕の横を多くのカップルが通り過ぎていく。二人で一つのマフラーを巻いているカップルは、今のところ見受けられない。
一度息を吐く。今日は去年のクリスマスと違い、雪は全然降っていない。雲に覆われた空は真っ暗で、町の輝きを一層強めているように思えた。
僕は異様に長いマフラーを首に巻き、一枚の紙を手に立っていた。この紙は去年のクリスマス、彼女の両親から渡されたものだ。
半分に折り曲げられた手紙を開くと、そこには字を覚えたての子が書いたような文字が並んでいた。この手紙を書いた時にはもう、握力はほとんど残っていなかったのだろう。
先生から、彼女は手術の前日にこの手紙を書いていたと聞いた。
この一年間、毎日読んでいるけど、僕にはその手紙の内容がほとんど分からないでいた。自分が死ぬであろうことを予期して書いたのか、これからの僕達の未来を書いたのか。
だけど最後の、一番力を込めて書いたのであろう部分だけは、読み解くことができた。
『ずっと、愛してる』
多くの人が周りを行き来しているにも関わらず、僕は一人で笑みを浮かべてしまう。
好きな子から愛してると言われて喜ばない男はいないだろ。
僕はその言葉に返事をするように、あの日以来、毎日言い続けてきた言葉を呟く。
「今日も愛してる」
格好悪いと笑ってくれる人は、もういない。
〈了〉
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