奇跡の行方

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「相変わらず長いマフラーだね。作っている途中に気付かなかったのか?」 「わざと長く作ったんだもん。ほれ、ちこう寄れ」  ちょいちょいと手招きされるので、それに従ってベットの脇にある椅子に腰かける。すると彼女は僕の首にそのマフラーを巻き付け、一昔前のドラマでしか見ないようなバカップル体勢を作り上げる。  ……まあ、アレと違い、マフラーが長いお陰でわざわざ顔を近づける必要がないのが救いかな。椅子に座ったままでも、ベットに座ったままの彼女と繋がれるぜ。……こんな姿を彼女の両親にでも見られれば、即刻、出入り禁止を言い渡されそうだ。 「この部屋は暖房も効いているし、マフラーなんか巻いてたら熱くて仕方ない」 「うるさいなー。絞めるぞー」 「本当にできそうだから、そういうことを言うのは止めてくれ」  もし今ここで、実は浮気してるんだ、なんて言えば即絞められるだろう。それを体験したいがためにそんな嘘を吐くほど、僕はマゾではない。  僕は思い出したように右手を挙げ、小さくなってしまった雪玉を彼女に見せる。すると彼女は眼を輝かせ、冷たい雪玉を素手で掴み眺める。 「うわー、やっぱり雪は綺麗だね。入院中に雪を触れるとは思わなかったよ」 「あれ、僕が雪を取ってるの見てなかったんだ」  てっきり、病室から見られてると思ったけど。何時のバスで来るかも伝えてたし。 「見てなかったって?」 「いや、別になんでもない。……ということは、僕は一人で手を振っていたわけか。恥ずかしいな」
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