【彷徨】さまよう女

351/365
前へ
/365ページ
次へ
そこまで言うと立ち上った、私ももういたたまれず立ち上った、二人を仕切るアクリル板に、両手を広げて張り付いた、その冷たいアクリル板を通して、母と娘の温もりを感じた… 唯、黙って泣き 合う二人の姿が夢の様だ この、アクリル板さえなかったら抱き合って泣ける、二人を隔てるこの仕切りが憎い 「お母さん、どうしてたの?」 「色々あってさ、お前と別れ別れになってしまい、毎日毎日お前の無事を祈って生きて来た、美穂は私の事を恨んでるだろうなと何時も思ってた、今日も面会に来たけど、逢ってもらえないかなと心臓がドキドキしながら、ここに来たんだ、でもお前に一目逢う事が出来て、もう私は何時死んでも良い」 「何を言ってるのお母さん、私はこれから私にもお母さんが居るんだと、自慢して生きて行けるもん、お母さん、逢いに来てくれてありがとう」 二人の手の平は合わせたまま離れない 「お母さん、お母さん」 と、何度となく呼び返した 流れる涙はとめどなく流れ出る、母親の顔は涙でぐしょぐしょに濡れている 「さあ、お二人共座って下さい」 と、刑務官にたくされやっと椅子に座った
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加