【彷徨】さまよう女

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その街に入ると、店の壁に『ホステスさん募集』の貼り紙が所々に見えた。その中の小さなお店に、恐る恐る入って行った。まだ夕方の早い時間で、客は誰も居なかった。女の子が2人とママさんがいた。ママさんは長い髪を頭のてっぺんで丸め、カンザシを横から差し、着物を着てなかなかの美人だった。 私は「済みません。貼り紙を見て来たんですけど…」 「あぁ…そう…。奥のボックスに座って」 「ハイ」 と言ってボックスに座ると、女の子がジュースを持って来てくれた。 ママは「灰皿もね」 と言って 「貴女、タバコ吸うの?」 「ハイ、吸います」 と安物のバックから、セブンスターを出して口にくわえた。 素早い手つきでママさんが、ダンヒルのライターで火を点けてくれた。此処で大人ぶらなければいけない私は 「あぁ…済みません」 と言って大きく肺の中まで吸い込んだ。 タバコは中学1年生の時から吸っている。 「貴女、何歳なの?」 「19才です」 「あら、美樹ちゃんと一緒だわ」 と言って、店に居る一人の女の子を指差した。 「家は何処なの?」 「仙台です」 「そう…。来る時は良いけど、帰りは困るはね…」 「何時頃までやるんですか?」 「早くて1時。遅い時は2時頃かな?」 「寮はあるんですか?」 「こんな小さい店だから、寮なんて無いけど…。貴女の家で許してくれるなら、この辺にアパートでも借りたら良いんだけどね」 「お金も余り無いし。今夜から働きたいんです」 「わかったわ。じゃ、2~3日私の家に泊まってなさい。その間にアパートを借りて上げるから。それでどう?」 「そうして下さい!お願いします」 そしてこの日からホステスとして働く様になったんです…」
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