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「遥ちゃーん。
あなたは一体何を食べようとしているのかしら?」
「んー。
何をって、チョコレート……」
「ちょ、ちょ、待ちなさい!!
よく見てホラ!
これは消しゴムよ、わかる?」
「んー……、わっ。
ホントだ、消しゴムだ」
我に返ってハッとした。危うく、消しゴムを食べるところだった。チョコレートがトラウマに……。
「……ったく。
今日の遥、あきらかに変。
何回柱に自分から当たりに行ってたか……」
「すんません……」
私の目の前で、私に説教してるのは同じクラスの一ノ瀬明里(イチノセ アカリ)。
ピアノ科はこの学校に2クラスしかないけれど、高1の時からの仲良しで親友。
だけど、この通り姉さんでしっかりものだから、私はお世話されてるようなもの。
「ほら、手を動かす!
早く日誌終わらせて、あのケーキ屋行くよ。
せっかく、今日は自主トレ禁止の日なんだから」
「合点承知!」
明里は、長くて艶のある黒い髪をいつも高いところでひとつに結んでるだけで、化粧気は全くゼロ。 元が美人なのに勿体無い。
私の髪をいじるのは好きなのに、自分には全く無頓着。
だけどそんな明里のさっぱりしたところが私は好き。
本人には恥ずかしくて言えるわけないけど。
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