黒と白の旋律

初恋の君？

　下駄箱で靴を変えながら、明里は私に尋ねてきた。

「で、遥は一体何をそんなに考え込んでるの。
昼言ってた例の“初恋の君”？」

「ちょっ、明里！
声大きいって!!
もしアイツが来たら色々と面倒――――」

「だぁれが面倒ですと？」

　ホラ来た。噂好きヤローが。

「初恋の君、だって？
お前でも恋したことあるんだ？」

「うるさい三宅。
関係ないでしょ、そこどいて」

　やたらと毎日ちょっかいを出してくるこの天然ゆるパーマの男、三宅亮(ﾐﾔｹ ﾘｮｳ)。

　私にとっては天敵以外の何者でもないけれど、三宅は男子からも女子からも慕われている人気者。

「おーおー。
冷たいなー綾野は。
だからモテないんだよ」

　皆さんに問います。一体、三宅のどこがいいんですか。

「明里、早くいこ」

「ちょっと遥、いーの？」

「いーのいーの」

　みんなにとっては人気者かもしれないけど、私には関係ない。

　確かに顔はまぁ……、カッコイイ部類に入るんじゃない？

　でも朝のあの人に比べたら……。