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「なんだろあれ。
なんか校門前に人だかりが出来てる」
「え?」
明里に言われて見てみると、確かに校門前に人だかり。
「ほんとだ……。なんだろ?」
気になって近づいてみて――――私は目を疑った。
人間違い、じゃないよね……。
あのスーツにネクタイにメガネ。
それに、車に寄りかかって、女子生徒に囲まれて、嬉しそうなあの顔。
「誰待ってるんですかぁー?
もし良かったらぁ今日ぉー……」
「ん。ごめんね。
今日、先約があるんだ」
それにあの低ボイス。
「えー、いいじゃないですかぁ~」
あの声楽科の先輩、通称マスカラ先輩がそのご自慢の目をパチパチしてあの人にすり寄っている。
「もしかして、この学校に彼女とか……?」
「んー、内緒。
……あ、君かわいいね。
何科の何年生?」
「キャッ、私ですか!?」
彼はマスカラ先輩の隣にいた女子に声をかけてニコリとして――――と、そこまで見て私はその人だかりから視線を外した。
知らないふり知らないふり。
私は他人です。あんな色男さん知りません。
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