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「教えてくれない?」
「へ……?」
「その、“色々”ってやつ。
……なんかさ、俺に対して妙によそよそしい遥の態度とか、正直悲しいんだよね」
また、おちゃらけた感じでいるんだと思ってたけど。違った。
彼は、笑ってるけど……泣きそうな顔をしてる。メガネの奥の、色素のうすい瞳が揺れるくらいに。
どうして。どうしてそんな顔をするの?
5年前にいきなりいなくなったのはそっちじゃない。
突然消えて、また突然現れるなんて、どれだけ私を振り回すの?
「遥?」
彼は背けた私の顔を自分の方に向けた。
ほら、目が合うだけで、私はもう逃げられない。私の心臓はいつもバクバクで……泣きそうになる。
彼は私の髪を指に絡めて、もてあそぶようにしばらくそうしていた。
そうやって、髪をいじるの好きだったよね。
知ってるの?
あの日、“遥の髪、俺好きだよ”って言われた日から、私は髪を伸ばしてたんだよ。
だって、夏にぃが好きだったんだから。
小学生だったけど、本気で本気で大好きだった。
初恋だったんだよ?
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