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「つっ、かれたぁーーー」
「……買い物しただけで、どれだけ疲れてんの、遥。
ほら、ちゃんと手ぇ洗ってきな」
「はぁい」
“家帰って、ちゃんと手を洗わないなら、ピアノ弾かせてあげないよ?”
ふふ。思い出しちゃった。
夏にぃの、口ぐせ。
「何、笑うとこ?」
「うぅんー。
洗ってきまーす」
ネギが一人だけ顔をのぞかせたスーパーの袋を、床に置いて洗面所に向かった。
なんだろ。私、すごくいま上機嫌。
手を洗いながら、顔をあげたら、目をキラキラさせた私がいる。
遥さん。もう夜なのに、どうしてそんなにランランしてるの。
すごく楽しかったからです、お買い物が。
あのとき――――正確には、彼が私の髪を指に絡めたあたり。彼は、急に「ヤベっ」ってつぶやいて、私の髪から手を離して時計を見たかと思えば、また「ヤベっ」って言った。
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