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休み時間が始まると、授業中も静かでは無かった教室内が更に騒がしくなった。
「(暇……)」
暇を持て余そうとも、自分の立場も立場だし、何も出来ない。
それに俺の周辺には人が寄り付いて来ない為、どうしようもない。
椎は授業が終わると同時にクラスの友人に引っ張られてどこかに行ってしまった。
引っ張られて行く時の名残惜しそうな顔が思わず犬に見えたのは秘密だ。
「ねぇ、橘」
また窓の外を眺めていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、嫌な笑顔を浮かべた男子生徒が4人。
…明らかに怪しいだろ。
「何?」
「ちょーっと来てくんない?」
肩を叩いた男子の後ろにいた奴が、首を傾げておどけたように言った。
男がやっても気持ち悪いだけなんだけどねぇ。
そんな気楽な事言ってる場合では無かった。
ちょっと来いの意味は多分、イジメの延長線にあるもの…リンチ的なもので間違いないと思う。
「…………やだ」
分かりきっていることなら策は練られる。
――逃げよう。
素早く立ち上がってクラスメートを押し退け、走って教室を出た。
「…は!?おい、橘待てよ!!」
後ろから慌てたような声がしたが気にしない。袋だたきにされるのがオチと分かっているなら、逃げるが勝ちだろう。
しかし、これも無理矢理なのだ。今の俺の足で走れるわけがない。だからスピードも遅いし、足の痛みも限界に達した。
「――……っ!!」
左足に激痛が走って一瞬足の力が抜けた。まだ痛みの少ない右足で踏ん張ってはみたが、体重をかけてはいけなかったようで。
そのまま前に、重力に従って転んでしまった。
けど逃げなきゃ、これ以上にボロボロにされるのは分かっているんだ。
慌てて立ち上がろうと腕に力を入れる前に、背後から頭を押さえ付けられた。
「あれ、大丈夫ー?頑張ったねぇ、そんなに走れてないけど?」
頭を抑えられて動かせない。それに冷や汗が背中を伝う。
逃れようと暴れてはみるがまるで意味がない。
俺を見下ろすクラスメートは暴れる俺を簡単に押さえ込む。羽交い締めにされてはもう逃げられない。
…最悪だ……。
「離せ…よっ」
「って言われて離す馬鹿はいないよー?いいから大人しく来いよ」
これが大人しくしていられるか。
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