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必死に抵抗はしてみたものの、俺の力で敵う筈がなく。ほとんど引きずられるようにして俺はどこかの教室に連れて来られた。
「この辺でいいだろ」
「お前よくこんな教室見付けたよねー!使わない教室なんてさ」
この会話だけなら普通の高校生かもしれないのにさ。
腕を離されて、床に投げられる。足の痛みに気を取られて手もつけずそのまま倒れた。頭をぶつけて一瞬視界が白く染まった。
「何か可哀相、コイツ」
「なに情けかけてんの?お前が今からやることの方が可哀相だと思うよー?」
「そうそう。…さーてと。俺今鬱憤溜まってんだよねー」
一人が手をボキッと鳴らすと、俺の横に立って、勢いよく俺の腹を蹴りつけた。
重い蹴り。胃から何かが込み上げてきそうになるのを堪える。
「――…ッふ」
「ほらあ重いって。サッカー部くん」
どうやら今蹴ってきた奴はサッカー部らしい。そんなの反則だと思う。
蹴られた所の痛みが引く様子はなく、腹を抱えるように抑える。
すると今度は腕ごと容赦なく蹴り付けられた。
またしてもサッカー部の奴。
それを合図に残りのクラスメートが次々に俺に暴力を奮いはじめた。
元々の傷の上から上書きを重ねられた傷。そして更にまた付けられた傷は、見るに耐えない状態なのに。
それ以上上書きしたら、どうなると思ってんだ…。
「?…抵抗しないね?」
「ちょっとつまんねぇよな」
「なぁ橘?ちょっとは足掻いてみろよッ!」
一人が俺を蹴り飛ばす。
最初は教室の真ん中に投げられたが、だんだん場所がズレていたようで。
俺は後ろに積んであった机に激突した。
その衝撃で机のバランスが崩れた。
「……やば」
上に積まれた机が落ちてくる。
逃げようとしたが、体力的に限界を越えた俺の身体はびくともしない。
咄嗟に俺はクラスメートを見た。
俺には机が落ちてくることがスローモーションで見えているが、クラスメートにはそうは見えないらしい。
まだ気付いてなく、ニヤニヤと笑っている。
「あ…、やばくね」
漸く気付いたらしいサッカー部が声を上げるも、奴らから見ても俺から見ても、時既に遅し。
十何個ものの机が一辺に落ちてくる大きな音がして、俺の意識はそこで途絶えた。
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