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(恭悟side)
橘香月は、よく分からない存在だと俺は思う。
実を言うと、俺と橘は只のクラスメート以上、まぁつまり友達だった。
椎が来る前は、昨日の出来事とかは実は全部俺が教えていた。
そのくらい、仲がいい方だったんだが。
「何だかなぁ……」
ある日突然、橘は俺を忘れたんだ。
いや、忘れるのはいい。アイツの病気はそういうのだからどうってことはない。
けどアイツは俺の事を毎日ノートに描いていてくれていた。
だから、名前だけでも分かっている筈なのに。
『ごめん、ノートには無かったから君の事は分からない。とりあえず名前は八重歯でいいか?』
なんていきなり言われた。
とりあえず八重歯って何だよまじで。うるせぇな俺なりにちょっと気にしてんだよばか。
とにかく、あれだけ毎日仲良くしていた奴にいきなりそんなことを言われて、俺は頭にきたんだ。
そして、橘との縁をばっさり切った。
何日かは橘はそのことをノートに書いていたらしいが、それも無くなった日から俺達は他人になったわけだ。
橘の場合、他人に戻るのは容易なことだから。
それが悲しかった。
橘のことは結構好きだったし、記憶障害なんて気にならない程気さくでいい奴でもあった。
だから一層俺は、橘を避けた。
代わりに幼なじみのりんとよくいるようになった。そこからりんとは親友ってのになったわけだが。
けど、俺はまだ足らなかった。
友達も少ない訳じゃないし、毎日青春できてると思うのに、
橘と他人になってから、何かが足らないと思い始めていた自分がいた。
だから、許せなかった
アイツの、
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