気持ち悪い裂け目

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何となくあずりを眺めていると目が合った。 あずりの瞳は青みがかった黒のような、何とも不思議な色をしている。吸い込まれそうな色。 「………香月」 「…あ、はい?」 瞳を見つめすぎて一瞬遅れて返事を返してしまった。 その不思議な色に魅了でもされたのかもしれない。 けれどあずりは気にも止めない様子で俺の瞳を見つめ返したまま。 「あずり、いいか?もう授業も」 「香月は欠席にさせて」 「は?」 鈴也が反応する前に、あずりが俺の腕を掴んでどこかに連れていこうとする。 されるがままだった俺も一度腕を振りほどこうとするも、悲しいことにあずりの力は緩みもしない。 そんなに俺に力がないのかと一瞬絶望しかけたよ。 「あずり!」 「鈴也。…授業、始まるんだろ」 文句一つ言わせない態度のあずりに鈴也も怯んでいた。 穏やかそうな雰囲気でもその瞳は冷え切っていて変な恐怖心を誘う。 鈴也が戸惑うのも無理はないと思った。 そしてそのまま俺は、あずりに引っ張られて行きながら、どこに行くのだろうと呑気にそんなことだけ考えてみた。 「…入って」 連れて来られた場所は、どこかの教室。 聞けばここはあずりの教室らしい。 時間割を見ると、体育と書かれていた。成る程だから誰もいないのか。 「失礼しまーす…」 誰もいないにしても礼儀として一応は。 なんて思って言ってみても、案の定あずりの反応は無かったから悲しい。 あずりが教室のドアを閉めたかと思うと、突然耳元で壁を叩く大きな音がした。 後ろは壁、目の前はあずり。 つまり俺はその間に挟まれている体制にいつの間になっていた。 「…なに?」 「俺のこと、覚えてる?」 「……ごめん」 深刻そうなあずりに言うのを渋ったが、隠してもいられず、間を置いて白状した。 するとあずりは小さいため息を漏らした。 「…それなら、それでいい。……川村あずり。ノートに書いておいて」 断る理由もなく素直に頷くと、一瞬あずりが笑ったような気がした。 しかしすぐに引き締めて、その吸い込まれそうな瞳に見つめられた。 少し目線を躊躇ったが、俺もあずりの瞳を見ることにした。 「……鈴也と、仲いい?」 「え?ああ…色々話を教えてもらった仲、かな」 「…椎ではないの」
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